ゆかりの床知識
floor knowledge
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こんにちは。床診断士のゆかりです。
時間の経過とともにさまざまな劣化や傷みが生じてくる、病院の床。新築時はきれいな床だったのに「負荷がかかる中央部分の黒ずみが気になる」「床の端が剥がれてきている」という場合、そろそろ床改修やリフォームのタイミングです。
病院の床は患者の満足度に直結するのはもちろん、従業員の働きやすさも左右します。今回のコラムでは、病院の床改修・リフォーム前に知っておきたい床材の種類や使用箇所、床材選びのポイントなどをまとめてご紹介します。お困りの床の問題を解決するヒントとしてお役立てください。
日々多くの人が行き来する病院の中でも、床は大切な役割を担っています。
見た目がきれいな床は患者に安心感を与えます。見た目が古く汚れた床は、どんなに掃除をしていても不衛生な印象に。心身の不安を抱えている方が多く利用される場所だからこそ、明るく清潔感のある床にすることが大切です。
床材には防滑性やクッション性といった機能が備わっています。小さなお子様が滑りにくい床、車椅子でも移動しやすい床など空間に合わせて機能を選ぶことで、利用者に安心安全に過ごしてもらうことができます。
病院での仕事は長時間におよぶうえ、ほぼ立ち仕事です。患者の体調の変化や急なアクシデントに対応し続けるためにも、体への負担は極力おさえたいもの。あらかじめ足腰に負担のかからない床材を選んでおくことで、従業員は無理なく働き続けることができます。
こういった役割を担うことを意識して、最適な床材を選びきれいな空間を保ち続けることが大切です。
床材にはさまざまな種類がありますが、病院の床改修・リフォームに選ばれる床材は大きく3種類「ビニル床シート」「ビニル床タイル」「カーペットタイル」です。それぞれの特徴と使用箇所についてみてみましょう。
シート状のビニル床シートは、ポリ塩化ビニルを原料としたものです。ビニル床シートにはさまざまな機能があり、用途に合わせて選ぶことができます。
たとえば、歩行量が多いエントランスでは耐久性の高いもの、手術室など重量物が移動する場所には耐動荷重性に優れたものなど、豊富な選択肢から選ぶことができます。
広い面積を一気に張り替えることができるため、短期間でリフォームを進めることができる魅力があります。
ビニル床タイルはビニル床シート同様、原材料はポリ塩化ビニルですが、タイル状になっているのが特徴です。40〜50cm角程度のタイルを一枚ずつ組み合わせて使用します。色や柄が豊富で、貼り合わせのパターンによってさまざまなデザインを実現できます。
耐久性の高いものやメンテナンスがしやすいノーワックスメンテナンス対応のもの、 また比較的コストを抑えることができるものなど、豊富なバリエーションがあります。目地があり、ビニール床シートと比べると防水性が低いため、診察室や処置室といった空間ではなく受付やロビーのような多くの人が行き来する場所に使用するのがおすすめです。
ポリプロピレンやナイロン、ポリエステルなどの素材でできたカーペットタイル。色やデザインが豊富で、ダメージが気になる部分だけの交換など手軽にメンテナンス可能です。カーペットは色褪せや薬品耐性が比較的気になる製品ですが、最近はこういったデメリットを克服した製品が増えています。
製品によっては高級感を演出しやすいため、待合室やラウンジなど病院の印象を左右する場所に多く使用されています。
病院の床改修・リフォームを進めていくうえで、機能やデザインなどどういった床材を選ぶと良いのかポイントをみてみましょう。
病院は24時間365日働き続ける建物です。そのため診察を続けながら床改修・リフォームを進めていく必要があるのですが、その際多い悩み事として以下の内容が挙げられます。
・なるべく短期間で工事を終わらせたい
・「工事中だから……」と患者の足が遠のかないようにしたい
・工事によって患者の動線を妨げないようにしたい
・従業員が動きにくくなることによるサービスの質低下が気になる
床改修・リフォームにはある程度時間がかかりますが、使用する床材や選ぶ工法によっては工事期間を短くすることができます。たとえば、置敷きタイルという製品群は、既存の床のうえに接着剤を使用することなく施工できます。 接着剤の臭いがなく、作業時の騒音も軽微なので、営業をしながらの部分的な改修に適しています。
最適な方法を提案してもらいながら、床改修・リフォームを進めていくことが大切です。
床材は空間の用途に合わせて選ぶようにしましょう。たとえば、多くの方が行き来する廊下は適度な防滑性がありつつ掃除しやすい床材がおすすめです。見た目の美しさだけで床材を選んでしまうと、素材によっては滑りやすく転倒につながる危険も。また、小児科はクッション性の高い床材を選んでおかないと、動き回る子どもが転んで怪我をする可能性もあります。
病院を利用される方の安全を確保できるように、最適な床選びを心がけましょう。
病院の床材を選ぶ時は、以下のポイントをおさえて選ぶことをおすすめします。
24時間稼働している病院では、ワックスメンテナンスのタイミングが難しいため、 日常清掃のみでメンテナンスができる床がおすすめです。
病院にはさまざまなウイルスや病原菌に感染された方が来られます。患者が入室する空間は、抗菌・抗ウイルス性能のある床材が効果的な場合もあります 。
汚れがつきにくく落としやすい床材は、簡単なお手入れできれいな状態を保つことができます。血液や水分、薬品などそれぞれの特性に対応する素材を選びましょう。
高齢の患者や体が弱った患者が滑って転倒するリスクを軽減するためにも、適度な防滑性のある床材を選びましょう。 ただし、過剰な防滑性はつまずきの原因となります。
多くの来院・入院患者の歩行や車イス移動に耐えるためには、耐久性の高さが求められます。耐久性の高い床材は、機能や美観をより長く維持できます。
病院ではさまざまな薬品を扱います。誤って床にこぼしてしまった場合、床材によっては変色したり侵食したりすることも。見た目の印象悪化を防ぐためにも、耐薬品性のある素材を選びましょう。
衝撃吸収性の高い床材は、転倒時の衝撃を和らげてくれます。足や膝、腰への負担が少なく、心地よい歩行感が得られます。
病院を利用される高齢の方や体の弱った方たちの安全を守るには、転倒の衝撃を和らげる床材や滑らないように配慮した床材が最適です。クッション性が高い床材に、下貼り材も組み合わせることでより安全性を高めるという方法もあります。
また、患者だけでなく、一日中歩き回っても疲れにくい床材や清掃の負担を軽減する床材など、従業員にとって適した床材も安全な職場環境づくりの根幹を担います。その場所でしっかり性能を発揮できる床材や適切な工法の選定を行い、安全性に配慮した床改修・リフォームを進めていきましょう。
病院の床改修・リフォームを進めていくには、場所や用途に適した床材選びが重要です。さらに、改修時の騒音やニオイ、ほこりが患者や従業員の負担にならないよう、スムーズに工程を進めていく必要があります。
通常の床改修・リフォームとは注意する点が異なるため、実績が多く専門性の高い業者に依頼して計画を立てていくようにしましょう。